海外駐在:インドネシアでのふたつのできごと


2017/07/08  佐藤 純一郎


シニアの方なら兼高かおるをご存じでしょう。昔パンナムがスポンサーの「世界の旅」という番組をやっていましたね。


80歳を超えた今でも世界を飛び回っているらしいですが彼女が「海外旅行をすると必ずアクシデント、ハプニングがある。それを自力で克服することで自信がついて人間、成長するのだ」と言っていました。

 

私も現役時代は何十回の海外出張、3年間のシンガポールでの駐在生活をこなしましたが今無事に日本で暮らしているということはこの言葉通り幾多のハプニングをこなしたということでもあります。中には「命も・・・ヤバイ?」という経験もあったのですが、まずひとつインドネシアでの出来事をご紹介します。


シンガポール駐在時にタイとインドネシアに出張した際のこと。すべての予定を終えて金曜日夕刻ジャカルタの空港でいざチェックインしようとしたが航空券がどこを探しても出てこない(当時はeチケットではなく紙のチケットなのでパスポートさえみせればOKというわけにはいかない)。


航空会社に相談すると「航空券の再発行には警察の紛失証明書が必要」とのことでしかも警察は空港ターミナルの外とのこと。しょうがないと覚悟を決めてタクシー乗り場に向かおうとすると途中でターミナル内に警察のカウンターを発見。藁にもすがる気持ちで7万ルピアを示して(ご存じのようにインドネシアはワイロ天国)訳を話すと「Yes sir!!」と嬉々として証明書を発行してくれた。

 

7万ルピアが効いたのだろうがちなみに日本円では500円ほど・・・。搭乗時間ぎりぎりに全ての手続きを終えて無事搭乗という顛末でした。機内で呑んだビールのうまかったこと・・・。


人間、追い込まれれば覚悟を決めてアクションもできるし、また天も味方してくれるということでしょうか、「追い込まれたが最後に逆転して事なきを得た」これに類した出来事にはこと欠きませんでした。


さて、仕事上印象に残っていて今でも肝に銘じていることにも触れましょう。


当時、公共下水が普及していないインドネシアで日本製浄化槽の事業化プロジェクトに関わっていました。インドネシア側のパートナーは半官半民の下水道事業公社で、ジャカルタでの実証実験からスタートしたのですがこのときに同社の担当役員から最初に言われたのは「インドネシアで事業をする場合まずはインドネシア企業と信頼関係を築くこと。最初から功を急ぐのは日本人の悪い癖。嫌われて何事もできない」というものでした。


本社に報告するたびに「で、いつから売れるんや?」と返されるのはいうまでもなかったですが幸い会社の運命を決するほどの大プロジェクトでもないし日本環境省との共同プロジェクトでもあったのでのらりくらりのペースを守れました。


途中、下水道事業公社の縦割り組織や各人の責任感の希薄さから「総論賛成でもいざ契約となるとなかなかコトが進まない」悲哀を何度かあびたものの、この言葉を肝に銘じて根気よく対応した結果実証実験は遂行でき、且つまたこの役員の人脈を活かして多くの政府関係者に人脈も広がり製品のPRの機会も得てこのプロジェクトは一定の成果を得ることができました。


「事業パートナーと信頼関係を築くこと」の大切さ・・・これはビジネスを進めるうえで洋の東西を問わずどこでもどんな事業でも言えることではないでしょうか。

          ジャカルタ調整池

ジャカルタ独立記念塔